Kteam Frames

昨年依頼を受けて制作した額装の紹介を兼ねて、Kteam Framesについての説明をします。
数年前に自分の展示で知り合った渡辺さんから、額装の依頼をいただきました。
娘さんが大事にしていた「アナと雪の女王」のアナが描かれた紙を、幼い弟さんが口にしてしまったそうで、それを修復したものを保護するための額装といったものでした。


「アナ」


私は(確か)2018年からベニヤ板や木工用ボンドなどのホームセンターで手に入るものを使って額縁を制作する「Kteam Frames」(以下KF)という創作活動をしています。
制作を始めた理由や経緯はいくつかありますが、主な理由は額縁屋さんに制作を依頼できるほどの経済的な余裕がないことでした。

この「お金がないから自分でやってみよう」が額装に限らず私の全ての創作活動の前提にあると思うので、ここからは「後付け」の域を出ないということを承知の上で説明をします。
当時は「自分で一から描いた絵や、撮影からプリントまでした写真なのだから、額も自分で作ったほうが一貫性があるのでは」と考えていました。また、HEADQUARTERSをオープンした直後で、テーブルや棚などを制作した際に余った木材がたくさんあったこと、友人が私の誕生日に送ってくれたポスターや写真を飾りたかったことなども大きな動機になったと思います。


ignored (2020) / 銀塩プリント、ベニヤ板、ミシン




Frank Oceanのポスター (2021) / 686 x 986 (mm)



norahiのペイント (2020) / 700 x 700 (mm)



Frank Oceanのポスター  (2022) / ナイロン、PVC、スナップボタン


写真をメインで活動していた時に、プロの方からプリントや額装についての話を聞いたことがありました。とても奥が深そうで、知識や技術が必要なとても難しいもので、なんとなく自分が手を出してはいけない高尚なものという印象を受けたのを覚えています。
通常のアートフレームは繊細なプリント(作品)の劣化を防ぐためのマットボードや専用のテープなどが使われていて、完成した額にはホコリひとつ入っていないのが当然といったものですが、「ちょっとそういうのじゃないやつを作ってみよう」「DIYでパンクな額があってもいいだろう」と思って作り始めたので、KFの額は歪んでいたり、隙間を木工用ボンドで埋めていたり、ベニヤ板や2×4材にビスを打ち込んだりしながら制作しています。

なので、誤解を生んでしまう恐れがあるので、自分から「額装をやっています」とは言いづらい部分があります。いわゆる額縁の制作ではなく、一つの創作活動としてやっている、のだと思います。とにかく、手元にある素材で額のようなものを勝手に作っています。


ドローイング (2021)



友人からの手紙 (2022)



Kteam Frames展示風景 (2022)


いくつか額縁を作っているうちに気づいたことがあります。まだうまく言語化できていませんが、少し勇気を出して書き出してみます。

まず自分にとって、額装とは「権威を与える」ことと捉えていました。例えば子どもが絵画コンクールで賞を取ったら、記念にその絵を飾るために額装するといったことは自然に考えられます。どちらかというと「権威が与えられてしまう」といった方が正しいかもしれません。「額に入らなかった絵」が生まれるわけですから、階層や優劣のようなものが額縁とセットで生まれかねないということです。

私としてはそういった「権威性の付与」は目的ではないので、自分で自分の作品を額装する際は、作品を基に作るのではなく、アクリル板や木材など今手元にある材料のサイズありきで作品のサイズを決めたり、なんなら作品をトリミングすることもあります。同時に、「気に入った作品を額装する」という判断基準や、「他者の作品に優劣をつける」ことを否定しません。


Erikの写真 (2022)


もう一つは、額縁には「作品を立たせる」という機能があるということです。
例えば今回制作した「アナ」は、一度バラバラになった紙というとても繊細で、薄いものです。こういった「大切だけど脆いもの」は箱に入れたり、ファイルに挟んだりして保管(仕舞う)されることが多いと思います。それは「寝かせる」という状態だと思います。寝かせてしまうとなかなか表に出す機会は減ってしまい、紛失してしまう可能性も出てきます。保管しつついつでも観られることが目標ですが、無理やり立たすのではなく、作品(オリジナル)という繊細で替えのきかないものに負荷を与えずに立てるようにする「手すり」や「松葉杖」のような補助具的な役割も必要なのだと思います。

どういう額装にするかを考えるにあたって、「娘が大切にしていたもの」「父親が修復したもの」「幼い弟の口に入ったもの」など、小さな紙に多くの文脈やパーソナルな事情が含まれていること、作品というより「お守り」だということを踏まえ、とにかくただ「安全に立ち上がらせる」ことができればいいのかなと思いました。渡辺さんもおっしゃっていましたが、「文化財の修繕」とかそういう気持ちを常に持って制作していました。

厚めのアクリル板やボルトが一見クールな印象を与えますが、私としてはとにかく何も足されないように、「渡辺家の小さな保管庫兼ディスプレイ」のようなものにしたいと思ってこれらの素材を選びました。台紙の色、ピンクの糸と蛍光イエローの生地などは渡辺さんに選んでいただきました。






アナ / 140 x 160(mm)


現時点でのKFの額装は、この三つの価値観を念頭に制作しています。

・「作品≒個人」である
・額縁は「作品を保護するもの」である
・額縁は「作品を作品のままにしておくもの」である


前述した通り、(バッグや音楽もですが)私は額装の知識も歴史も知りませんし、特に学ぼうとも思っていませんが、「そもそも額装ってなんなんだろうか」と自分なりに考えながら制作しています。

「こどもが大切にしていたもの」と「一度壊れてしまったもの」というかなり本質的な何かをこちらに問いかけてくる二つの要素が組み合わさったものに向き合いながらの制作は、気づかされることが多かったです。
ありがとうございました。
阿部

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