4/5~6に大阪で開催される「PLAT CIRCULAR MARKET」に合わせて、使用済みのヨットのセイルクロスでバッグを制作しました。
セイルクロスは、要は「帆」です。

Small Backpack

Medium Shoulder Bag

Key Holder

張り切ってたくさん作りました
使用済みのセイルクロスでの制作は久しぶりのことでした。
バッグ制作を始めた頃は使用済みのセイルばかり使って色々と作っていました。
その当時は無償でもらえる機会が多かったので、「かっこいいしタダだし」くらいの気持ちで気軽に使っていました。
ですが、制作を続けていて、再利用生地のリスクや不安定さといったデメリットに気づくこととなり、最近はあまり使用していませんでした。
私が思う再利用生地の一番のデメリットは「目に見えない劣化」です。
ぱっと見は少し汚れているくらいなのですが、実際は生地の劣化が進んでいて、少しの力で破けたりすることがあります。
セイルは紫外線や海水に長時間さらされていることが多いので、いくら元々が丈夫な生地とはいえ、バッグにするには強度が足りません。

広げると大きいので生地をカットするのも大変
また、フィルムでラミネートされているタイプのセイルクロスは、縫製の仕方を間違えるとフィルムがすぐに破れてしまいます。
数年前に初めてこの生地を使った時は、普通のナイロン生地と同じように縫ってしまい、ほとんどのバッグを無駄にしてしまいました。
今回は、別の生地を被せてみたりと色々と試しました。


他にも、汚れやカビをクリーニングしたり、シワや折れ目を処理したりと、体感ですが再利用生地は普通の生地の3倍くらい手間がかかります。
それでも、再利用生地で制作したバッグは、普通のバッグにはない独特の雰囲気や、「エコ」や「エシカル」といった文脈という付加価値が加わります。
そのあたりの知識は私にはあまりありませんが、例えばスイスのバッグブランド「フライターグ」や、アウトドアブランドの「パタゴニア」は、「環境」というキーワードを前提に、使いやすさやクールさも兼ね揃え、世界中の人々に支持されています。
最近はより一層環境について関心を寄せる人が増えていると思います。さらに、コロナ禍における手芸ブームや昨今の古着ブームも相まって、リサイクル、リユースは多くのメイカーも無視できないファクトだと思います。私もそうです。
とはいえ、そういった状況に少し冷めている気持ちもあります。
「私のような個人のメイカーが再利用生地で制作をしたところで、地球の環境に果たしてどれだけの影響を及ぼすのだろうか?」「手間もリスクも多い素材を扱うことで自分へのメリットはあるのか?」
などなど、いくらでも疑問は思いつきますし、実際に、私が再利用生地でバッグを作っても環境への直接的な影響は無いし、私にはデメリットの方が多いと思います。
また、自分の性格が捻くれているという自覚はありますが、このような環境意識の高まりに付随する「見せかけの謙虚さ」的な雰囲気からはできれば距離をおきたいと思っているのが本音です。


Record Bag / あえて一番劣化している箇所を使用しました
それでも今回、久しぶりにセイルクロスでバッグを制作しようと思った理由は主に二つあります。
一つは、以前よりも少しだけ縫製の知識も増え、縫いづらい生地への対処法も身についたので、諸々のリスクを克服できると思ったからです。
もう一つは、「面白そう」だからです。前述したように、現在の知識やスキルでセイルクロスのバッグを作ったらどうなるのか、自分でとても興味があったからです。
ちょうど環境にまつわるイベントに呼んでいただいたのも大きな後押しとなりました。

Wallet
改めて色々と制作してみて、やはり「大変」というのが率直な感想です。
ですが、補強するためのつぎはぎや多めのステッチなど、従来よりも色々と工程が増える分、思いもよらぬ結果や見た目になるのは、こういった再利用生地ならではだと改めて感じました。
大袈裟かもしれませんが、それはどこか人間らしいというか、一層「個」を感じることもあります。
通常よりも弱い箇所があったり、落とせない汚れがあったりするのは、「製品」としては許されないのかもしれませんが、「作品」として考えると決して否定できないと思います。
私はKSFCLBのバッグは製品と作品の間に位置すると考えているので、再利用生地はより適しているのかもしれません。
それと同時に、前提として、バッグは頑丈で長く使えるものでなければならないとも考えています。
好きなものを長く使うのが一番だと思います。
阿部